ベンチャーのマネージャを蝕む3つの病

田中です。ブログを書く書くと言い続けてまたさぼっておりました。

今日は、ベンチャーにおける難しい意思決定と、急成長を遂げる中でのマネージャが陥りやすい病について、書こうと思います。先日役員会で気づきがあったんですね。議題は、「技術開発部は機能別組織か、事業部別組織であるべきか」というものでした。そこで思ったのは、数ある経営戦略論の先達が、上記のメリット・デメリットを色々とそれこそ無数に考察しているのであって、経営陣である我々がメリット・デメリットから重要な経営判断をしちゃいかんのではないか、と思ったのです。堂々巡りの千日手っぽいのです。

DSC01120(写真は札幌地下鉄の改札で、あまり本論とは関係ありません)

経営層に近くなればなるほど、メリット・デメリット両方あって、どちらも取り難い難しい意思決定をしていかなければなりません。

結局、難しい決断をするには、ある種「ぶっとんだ視点」が必要です。例えば、BtoBであれば、「売上10倍にするには」とかですね。売上2倍程度だと、普通の打ち手しかでてきません。C向けサービスだと、「今1万MAUだけど、100万MAUに到達するには」など、俯瞰した視点も入れた意思決定をしていかないと、とてもとても競争に勝っていくことなんてできないと思います。

ロジックが破綻している意思決定すら、していく必要があるのです。「色々矛盾はあるけれども、3年後の競争力を最も上げるにはこれだろうな」というような意思決定。これをしっかりスタッフレベルまで浸透させるのは、またこれがすごく難しいですよね。何せ矛盾がある。そしてロジカルでもない。でも意思決定していかなければ、怖い怖いとビビってしまっては、何も競争力の無い普通の会社になってしまう。

結局、難しく、かつ良い意思決定をしていくには、ある種超越した視点を持ち、その視点から考えた「夢見せ能力」だったり、「ストーリー紡ぎだし能力」と、「現実から得られるデータ」が必要だと思うのです。人をひきいるマネージャには、特に前者の能力は必須だと思います。

「このストーリーならイケそうな気がする!!」ストーリーとは、それこそ色々な定義がありますが、「まずこれやるでしょ、そうするとこうなって、さらにこういう事が起こって、それを乗り越えるでしょ、なんで結局こうなる、ヤバくね?」くらいなんですよね。端から聞く限りでは、それほど難しいことでは無いように見えます。こういう熱いストーリーに部下が引っ張られて、結局スピードが保たれ、競争力も上がっていくと思うんですよね。これはマネージャの必須能力でありまずが、特に習得が難しい能力であると思います。

ベンチャーの特にマネージャにおいて、この「超越視点」や、「ストーリー紡ぎだし能力」を阻害する病が3つあると思ってます。ベンチャーのマネージャは、プレイヤーでもあり、マネージャでもあります。現場が見えすぎるぶん、阻害する病にかかりやすい。その3つの病とは、

1.バーバラ・ミントの抜け殻症候群

ごめんバーバラ・ミント。バーバラ・ミントの本は、ロジカルシンキング本の古典です。ロジカルシンキングといったらまずこれを薦められる人も多いのではないかと。ただ、この本難しいんですよね。私も戦略系のコンサルファームにいたときに、まずこれにやられました。もれなく、だぶりなく、いわゆる「MECE」というものだけ残ってしまって、それだけやったら満足してしまう病です。課題があり、それのメリット・デメリット(プロスコンスでもいいですが)を詳細に書き出して、「さあどうしましょう」と意思決定者に判断をゆだねる病。この病は、「深く思考する、ストーリーを流れで作る」というものからの「逃げ」から大体来ていると思う。

『結局、メリットデメリットも清濁併せ呑んで、「どっちがオススメなのだ??」』となることが多いです。メリット・デメリットの詳細な書き下しに時間を使っていると、「考えてる気になってる」んです。

2.パラメータ君

顧客単価や、継続率や、解約率や、とにかくいろんなKPIを切りまくって、エクセルシートを作ることに満足する病です。いや、わかるよ、エクセル作るの大変なのはわかる。そしてロジカルにやろうとしていることもわかる。でも、そこに「成功のためのストーリー」はあるのかな?例えば、10億円の売上を達成するなら、5000万円×20社、とやるのか、5億円×2社、とやるのかでも全然違う。パラメータ君の病にかかっている人は、積み上げ型思考になりやすいので、大抵前者を選択しがち。ストーリーは、勝たないといけないので、(戦略とは戦を略することでもあるので)、楽して勝つ方法や、課題を一気に解決する飛び道具も持ってないと、積み上げ型思考ではうまくいかなかった時に弱い。

3.リーンだけどスタートアップしない病

リーン・スタートアップは、近年もてはやされたし、素晴らしいやり方だと思います。「まずは小さく始めて、顧客から学び、PDCAサイクル回しまくりながらでっかくしていく」のはとっても優れたやり方だと思うのです。ただ、ベンチャーにおいてよくありがちなのは、「まずは小さく始めて、以上終了」なんですよね。小さくってのは大事なんですが、大きなストーリーも無いと、ピボットピボットの繰り返しで、残ったのは何も無かった、というのはベンチャーあるあるだと思います。常にでかい夢と、今の現実をいったりきたりできるか、いったりきたりを忘れると、どうしようもなく小さくまとまって、「何のためにやってるんだっけ・・・」と迷える子羊になってしまう。

こんなところでしょうか。拡大期のベンチャーに起こりがちなのは、中間層がこういった病にかかってしまうことではないかと思う。小さい組織であれば、超越した視点と現場視点両方全員持っているから、こういった問題はあまり起こらない。

で、結局のところ、マネージャ陣が悪い、って話ではないのです。そういうマネージャを量産している経営陣がダメなのです。経営陣自らがストーリーを語り、そのストーリーに沿って、超考える。これしかないかな、そしてやっていこう、と思ったポエムでした。